はじめて「尊敬できる」と思った先輩

大学2年の冬にして、人生で初めてに近い経験だ。

 

サークルの先輩と焼肉を食べに行って、一緒に自転車を押しながら帰って、じわじわと「あ、この人すごいな」と”尊敬”という気持ちを抱いた。

 

コロナウイルスの影響で就活は大変な状況で、周囲からも背中を押してもらえない「観光」という業界。

 

「それでも、私はきっとやるけどね」と背筋を伸ばして言い切った先輩はカッコよかった。

 

いつも私自身「自分の好きなことはしがみついてでも諦めない」ということを大事にしているつもりだが、ここまで実践している人は周りで初めて見たかもしれない。

 

 

「愛と恋のちがいって何だと思う?」

 

肉をつついていたら突然そう振られて驚いた。

 

「私ね、今付き合っている人が人生で最後の恋だろうなと思ってる。この人と結婚するか、一生独身を貫くか、どっちかだと思う」

 

1学年だけ上の先輩の口から”結婚”という言葉が淡々と出てきて、それなりのショックを受けた。

 

しかるべき時にしかるべきことを考え、決意できる人なんだと思った。

 

 

「大好きな地元に住んで、やりたい仕事をやって、好きな人と暮らしてるって幸せだよね」

それが幸せだと気づけて、それを本当に実現できそうな先輩みたいな人は実は稀有だと思いますよ。

 

 

私が言った。「また自分の話で申し訳ないんですけど…」

先輩が即座に答えた。「いいよ、たくさん自分のこと話しな。聞くからさ。」

すごくシンプルな、たったこれだけの答えを、しかし流れるように即答できることに、先輩の人生経験の豊かさと懐の深さを知った。

ジンワリともの凄く嬉しかった。

 

 

私の苦手なことができる先輩だ。

私の得意なことを苦手だと言う先輩だ。

先輩の3年後をみてみたい。

「”10年後の自分を想像して逆算してみましょう”って日本の就活嫌いだわ。人生って、何が起こるかわからないから良いんじゃんね。」

そうハッキリと言いながら、隣に並んで自転車を押している先輩は、今までで一番カッコよく見えた。