同性愛を睡眠療法で”治療”しようとする主人公に、医師が「同性愛が罪とされぬ国へ引っ越したらどうです」と言う。
さらに続けて「英国は昔から人間の本性を否定してきた国だ」と言った。
ギリシャ社会の柱は「精神の美」「人間の知識欲の美」と「男性の肉体美への憧れ」だった。
そう分析して同性愛を肯定したクライヴだったが、しかし後々、同性愛の罪で社会的地位を失うことを恐れ、女性と結婚した。
一方、クライヴと愛し合った主人公・モーリスは、彼の結婚に心底傷ついた。
そして、クライヴの使用人だったスカダーと駆け落ちのような恋に落ちる。
貴族と使用人という身分の違い
家族や地位を大切にするか、自分の本性に正直に生きるかという価値観の違い
しかし、この映画の舞台となる20世紀当初は、後者が許されざる時代だった。
人間は、自分の身と心以外の外力を無視することができる生き物だろうか。
できなくとも、そうしたいと望む
ラストでクライヴがモーリスに寄越した視線には、少なからず羨望があったと思う。