アニメ「少女革命ウテナ」はものすごくおもしろい。
なぜか。
まず、原作は漫画家・さいとうちほ
古典「とりかへばや」を題材にした、男として生まれたが女として生き、女として生まれたが男として生きる兄妹を描いた物語だ。
さいとうちほ先生は”男”と”女”という性別の垣根を超えることが好きらしいが、好きこそものの上手なれ、性別を超えたキャラクターが魅力的すぎる。
「王子様」に憧れ男装して学校に通う主人公・ウテナのように、性別を超越するからこそ際立つ、女として生まれた人間の魅力
もちろん、男として生まれた人間の魅力も、赤髪のキザな生徒会長(cv.子安武人)を筆頭としたカッコよさがすごいキャラクターたちによって存分に表現されている。もはやカッコよさがうるさい。
とくに、アニメ第25話「ふたりの永遠黙示録」では、イケメン3人がすぐ制服から胸をはだけさせるので、心の中のリトル・ノブ(千鳥)が「すぐ肌を見せたがるなあ!真治の武田か!」とうるさかった。
さらに、アニメ「少女革命ウテナ」をおもしろくさせる理由は、監督が幾原邦彦
セーラームーンシリーズのディレクターを務め、「輪るピングドラム」「ユリ熊嵐」「さらざんまい」などを手掛ける。
1997年に彼が手掛けた「少女革命ウテナ」は、その映像演出で時代を攻めすぎている。2020年に生きる私が観ても、映像と音楽に呑み込まれ、ジェットコースターに乗せられ、彼の世界に沈みこませられる。
漫画を原作にし、それをアニメとして昇華させるためには、「静」をいかに「動」に転換させるかが大事だと私は思う。
彼は、「このシーンは”動”にする。しかし、ここは”静”のままいく」という使い分けが、空手家もビックリするレベルで上手い。
つまり、5秒ぐらい一枚絵が続くことがざらにあるのだ。
しかし、そこに幾原邦彦が動きを足す。
アニメで追加できる”動き”とは何か。
たとえば、風だ。スカートやドレス、長髪を揺らす風だ。
そして、剣を交える決闘だ。会話が一枚絵でなされることが多い分、剣を打ち合わせるアクションシーンは、その動きの激しさが余計に映える。
たとえば、ウテナがしゃがんだ所から前方に立つ相手に向かって飛びあがってくる、あの風さえ感じる動きが、私は好きだ。
そして、第25話に関しては、ウテナとアンシーの距離が縮まったことを間接的に理解させる演出があざとい。
25話目にして、決闘前のウテナの変身シーンが大きく刷新された。
アンシーとは良き友人・パートナーなんだということがより強く感じられるものになった。
さらに、エンディングも同様に変わった。2人の距離の近さがより強調される映像になった。
言葉で言いはしない。映像で見せるのだ。
まぶたや指先やドレスの裾を動かして、観ている者の無意識のうちに、2人の女の子の距離が以前とは変わったことを理解させるのだ。
いやもう観終わってご飯食べながら10分後にアッと気づいて「してやられた感」があった。気持ち良い。
さて、おわかりいただけただろうか。
アニメ「少女革命ウテナ」は、ストーリー・キャラクター、それを魅せる”動き”の演出も素晴らしい。
なので、ものすごくおもしろい。
第1話が公式によってYouTubeで無料公開されている(2020年8月31日現在)ので、ぜひご鑑賞を。