今日は、お仏壇に食事を用意し、お坊さんを迎える日だ。
朝から台所は忙しくなる。
お米を炊き、汁物やおかずを用意する。
それを漆器に盛り付け、仏壇の前にお供えする。
同時に、子どもはお団子づくりを担う。
上新粉を練って丸めて茹でる。
何より楽しいのが、まっしろでまん丸の団子を三角錐に積み上げるところだ。
全部同じように並べているつもりだが、1つ1つの団子の大きさが違うから、3つの面で綺麗さが異なる。
祖母に「この面が一番綺麗だから正面にしようね」と言われるのが嬉しかった。
ついでに、余った団子は平べったく潰して、みたらしをかけて子どものおやつになった。
お経を読み終わったお坊さんの長い世間話を聞き流しながら、甘いみたらし団子に舌鼓を打つのがお盆の楽しみだった。
お坊さんはいつも大汗をかいてやって来る。
「いつ見てもここの仏壇は立派ですね」と汗をふきふき言う。
お坊さんが仏壇の正面に座り、その後ろに親戚一同が横一列に正座し、読経が始まる。
私が本当に幼かったころは母親に付いておリンを鳴らし線香を上げていたが、いつからか1人でお坊さんの前に出てやるようになった。
毎回なんとなく緊張した。
でも、心地よいお経の声が流れ、その後ろにセミの声が聞こえ、線香の香りが鼻をくすぐるあの空間はとても好きだった。