この1年間、自分はなにも勉強していなかったんだなとわかってしまった。
大学の友だちと、社会問題などの難しいことや将来のことを話すときには、自分は他と比べてよく話せるほうだと思っていた。
ニュースはよく把握していて、関心のあるものについては自分の考えをしっかり持てていて、それをほかの人に伝えることが、わりかしできていると、そう思っていた。
友だちには「じつは自分の意見をしっかり考えているよね」と言われ、先輩には「優秀だから、期待している」と言われ、すべてを言葉の通り受け止めたわけではないが、自分の中でも否定はしていなかった。
でも、高校の同級生と卒業以来に会って、気づいた。
安倍政権のはなし、人種の優劣のはなし、グローバル化のはなし、
「安倍政治はイヤだけど代わりを務められる党もいないよね、しかも」
「遺伝子レベルでアジア人は白人より優秀って科学的に証明されてるんだよ、なのに」
「もうこれ以上グローバル化は進めなくていい、だって」
どのはなしも今まで考えたことがないわけでは決してないし、大学の授業で取り扱っていたトピックもある。
それなのに、私は友だちのはなしの展開のスピードについていけず、聞き手にまわり、適当な相槌を打ち、気の抜けたエピソードを挟むことしかできなかった。
人種の優劣のはなしなんて、友だちの意見に反するアイデアをつい最近授業で学んだから、もっとつっこんで、本当にそうなのか問うこともできたはずだった。
しかし、私は聞いていた。ただ、聞いていた。
(ああ、それ、新聞で読んだよ)(それも)(それは授業でやった)
(でも)
(言うべき考えが見当たらない)
友だちと別れてからゆっくり咀嚼して、わかった。
彼女たちは今日まで約1年、しっかり専門の勉強をしてきたんだ、大学でしっかり学んできたんだ。
同級生のレベルが低いと苦笑しつつ自分でよく学んでいたんだ。
私はというと、恥を忍んで言えば、高校の授業以上に寝ていた。
授業中はしょっちゅう寝て、授業のない空き時間にも眠くなり、朝と放課後にバイトをし、サークルに出かけ、家事をして、予習復習なんてものはまったくと言っていいほどやっていなかった。
単純に勉強が足りなかった。勉強時間をとれていなかった。
時間がない、お金がない。
そればかり考えて、新たな知識もないことには気づかないふりをしていた。
いや、「時間がない、お金がない」に頭を支配されてきっとその可能性に思い至る余地もなかった。
まったく単純なはなしだ。
わかりやすい数字がある。
自分が1番興味をもっている分野、これを学びたいがために大学進学を決めた分野の本を今年何冊読んだか。
0冊だ。
いやまったく、新しい知識も0だ。そういうことだ。
どうして今日まで気がつかなかったんだろう。
どうして、高校の友だちに会うまで気がつかなかったんだろう。
もう、大学生の最初の1年は終わろうとしている。
まったく、救いようもなくその場でグルグル回っている1年だった。